Fate/stay night 最終回「全て遠き理想郷」 ★×4

最初に一つ。私は原作をやったことはありませんし、この作品に特別な意味での思い入れは特にありません。だから本当にFateが好きな人はこの感想は見ないほうがいいと思います。あくまで私は一アニメ作品としての評価を述べる訳ですから。


正直、私はこのアニメには共感できません。何故かと言えば、恋愛模様と、国のため・人のためという、個と全に対する感情がごっちゃになっていて、この作品は結局「大切な人を守る」ことを語りたかったのか、「自己が犠牲になってでも守る国がある」ことが語りたかったのか、よく分からなかった訳です。
当然この二つのものは作中常に天秤にかけられていたのですが、それにしても士郎のセイバーに対する「好意」が、非常に後付けであることが否めない。最終回でのセイバーとの思い出の回想を見ても思ったのですが、二人にとって思い出と呼べるような経験が少な過ぎる!せいぜい第20話あたりに無理矢理滑り込ませた話程度で、あまりにも二人で過ごした日常が薄っぺら過ぎて、二人の別れに「悲しいね」以上の意味合いを感じることが出来なかった。つまり「恋物語」としてのFateは明らかに失敗だったと、私は考えてます。
そして国を守ることですが、こっちも正直よく分からなかった。セイバーの守ろうとした国っていうのが、セイバーの口から語られる抽象的なイメージのみで、説得力が足りず、何をそんなに意固地になっているのだろう?という疑問を拭い切れなかったように思う。
どちらのテーマも充実して描ききれなかった分、話そのものの軽薄さが色濃くなってしまったと言いましょうか。
それらの軽薄さの最大の要因って言うのが、どこまでもステレオタイプな登場人物だと私は考えてます。ステレオタイプな正義の味方の士郎。ステレオタイプな全体への奉仕者のセイバー。ステレオタイプな自己犠牲の遠坂。彼らは人間らしいと言うより、上記のような概念の具現者みたいな存在なので、考えもすごく偏っていて、他の考えを受け付けない意固地な訳です。全く変化がなかったわけではないですが、同時に心の深層まで切り込むほどの各人への思想の批判が行われた訳ではない。結局、最初っから答えが決まりきっていた結論かなぁ、って。
それと、これは本当に個人的な事なんですけど、「全のために個が死ぬ」という前時代的発想が歓迎されるこの作品の空気が単純に合わない。別にそんな世界の常識染みた概念をアニメという世界でまで押し付けられたくないって言うんですかね。いや、もうこれは個人的なことなんで。あぁ、はい…。
ただ、場面場面での盛り上げは評価するんですけどね…。