夢使い 第8話「思い出は消えて」 ★×5

今回の話、というより前回の話も含めてのことなんですけど、『家族関係に生じた歪みは話し合いで解決していこう』、『兄妹の許されない愛は結局成就されない』、どちらをとってもすごく「普通」で当たり前のこと過ぎて、全然夢使いらしくないと思うんですよね。
夢使いは人間の深層心理を問う、言わばごく「パーソナル」なところに焦点を当てられる作品にもかかわらず、結論が個人の内的混沌でなく、社会通念というごくつまらないところに帰着してしまったな、と。両方とも、社会的尺度で考えたら至るべき当然の結果になっただけなんですよね。これじゃこの作品のコンセプトである、人間の本来的な望みによる「選択」がなされたとは言いがたい。


ただ面白いと思ったのが、前回の話で「兄妹が結ばれない」憤りをぶつける対象(悪夢の対象)に自分自身、そして妹を選択し、「社会」を選択しなかったこと。普通に考えれば近親相姦の許されない社会体制を恨みたくなりません?つまるところ、悪夢という存在はごく個人の世界に寄り添った閉鎖空間にしか影響を及ぼせないということだと、私は考えたのですが。分かりやすくいえば、一個人の願望の影響力の限界が「悪夢の発生する空間」の範囲程度であり、到底一人の人間が社会に影響を与えることなど叶わないという、一種の皮肉として描かれているんだな、と。だから前回の話では「社会」に働きかけることのできない憤りを、自分と妹に向けざるを得なかった。ちっぽけで弱い人間のせめてもの抵抗。