昔話

一体何から話を始めればいいのだろう。
大学卒業後の人生は実につまらないものだった。いつぞだったか「お前はつまらない人間だからつまらマンだな」と言ったこともあったが、俺が本物のつまらマンだったと思ったね。あーおれつまらマンだ。
普通の会社に入って、波風立てないように無難にやり過ごして、本当それだけだった。特別辛いこともなかったが、特に楽しいこともなかったな。正直語るべき内容もない。
それで、働き始めてある程度経ったときに気付いた訳よ。「あぁ、俺の人生には昔のように楽しいことはもうないんだろうな」ってな。

社会人になってからは昔ほどアニメを観ることもなくなって、いや一応見てたんだけど、大体なんかの片手間に見てて、アニメを眺めるっていう習慣だけが残った感じだな。
そんな時かな。ラブライブと出会ったのは。



最初にラブライブを知ったのはアニメ放送前の年末特番「もぎゅっと接近!ラブライブ!」だった。そこでふいに流れた「Snow halation」が妙に印象に残った。その時は軽い気持ちで、これええ曲やんと思って調べてみたら、今度ベストアルバムが出るらしいから買ってみるかーって程度だったな。今思うと、この一曲が運命の出会いってやつなんだろう。
そしてアニメの放送が開始。ここからは一気に引き込まれていった。もともと青春ストーリーが好きだったからすんなり共感できたし、なにより0からのスタート、惹かれあうように集まっていくμ'sメンバーたち、その駆け抜けるような展開に青春の一瞬のきらめきを感じた。とくに「まきりんぱな」から「やりたいことは」に至るまでの一連の流れは秀逸の一言。一人ひとりの少女たちがそれぞれの悩みを抱きながらも、寄り添い手を取り合うことで、悩みと向かい合い、前へ進み始める。まさに青春そのものだ。

そしてラブライブと共にしようと決心する決定的な出来事があった。それは第9話ワンダーゾーン放送後に開催されたシークレットイベント。これはホームページ上で応募し、抽選で招待のイベントだったが、奇跡的にもこれに当選した。今考えれば、とんでもない倍率だったのだろうが、最前列から3番目という良位置をキープできた。μ'sをこれだけ近い距離で見ることができるのは後にも先にもこれっきりだろう。
ぶっちゃけこのときにはさほど中の人には興味はなかったが、その時に生で見たそらまるの「にっこにっこにー」が衝撃的だった。あれっ?おっかしいなあ?目の前ににこが現実に存在してるんじゃね?と錯覚したのだ。
ルックスをにこに似せてきているのはもちろんのこと、あの恥ずかしいセリフを完全に自分のものにしていた。そのとき、こいつはとんでもない奴がμ'sにはいたもんだと感心したものだ。そしてこのときラブライブのイベントにこれからも参加しようと決意し、同時ににこ推しとしての自分が誕生したのだった。



その後アニメの放送も終了し、3rdライブに参加することとなった。これも今思うと、軽く20倍以上の倍率があったチケットをさほどの苦労もなく手に入れられたのは幸運以外のなにものでもない。こと、チケットに関してはμ'sの女神がほほ笑んでいるとしか思えない。
3rdは今でも一番自分が好きであるNo brand girlsの初披露の場であり、ホントこの一曲を聴くためだけに来た甲斐があった。特にサビの「Hi Hi Hi!」の部分の気持ちよさは抜群で、ライブが決定する前からアニメ映像を観て、これライブでやったら絶対テンション上がりまくっちゃうに決まってるよ!と、何度も観返したものである。その夢が、大勢の観客、そしてμ'sといっしょに叶えられたのだから、盛り上がらないわけがない。あの頃はまだノーブラの振り付けも定まってなかった時期なので自由に打つことができたのも大きい。
もちろんそれ以外の楽曲も盛りだくさんでラブライバーになる決意をしたことは正しかったのだと実感した。
そして、この場でアニメの二期が発表され、会場は歓声に包まれた。「もう一度ラブライブ!」この言葉はあまりにも魅力的であり、現実感がなく、しかしそれは現実となり、彼女たちの物語にまた寄り添うことができるのだと分かった瞬間に涙が止まらなかった。
3rdは色々なことがあり過ぎて、特別な存在であり、今でもなお人生最良のイベントである。



ラブライブとの出会いは、情熱を持ってアニメと向き合っていたあの頃の気持ちを再生する物語でもあり、いうなれば自分にとっての青春を取り戻すことでもあった。あの頃の情熱を上回るものにこの歳で再び出会えるとは思っていなかったし、この先の人生はつまらないものだと決めつけていたが、捨てたものでもない。μ'sの曲の一節を借りれば「青春が聞こえ」たのである。

そして2月1日、5thライブというという日に、再び二代目を出会わせてくれた奇跡が訪れたのである。ラブライブ!そしてμ'sには感謝の言葉以外出てこない。心から、ありがとう。