よつばと! (5) (電撃コミックス (C102-5))

よつばと! (5) (電撃コミックス (C102-5))

よつばと! (5) (電撃コミックス (C102-5))

読んで思った素直な意見は「恐ろしく計算されてる」な、と。
例えば最初の「よつばとダンボー」は、実は「みうらが中に入っている」ことを決定的に示している描写はない。別に本当にロボットだったと言いたい訳じゃないけど、それとなくダンボーをみうらとは分離した一つの個体であるかのように読者を意識に刷り込むのには成功していると思う。
あとは、およその人が経験しているだろうと思われる子供視点の共感覚。風呂の蛇口回したらシャワーが出てきた、ある食べ物(アイスとか)がとても特別なものに思えていたこと、意外といいみずたまり、等など。些細なことも合わせたら枚挙に暇が無い。
その中でも特に輝いていたのが海に行かないと言われて泣く場面。「ひょおおお」の、わざと泣きを荒くする描写も含めて子供の挙動そのもの。確かに、大人の都合で自分の思ったことがその通りにいかないで泣きそうになるのは子供の気持ち。こういう、子供の頃には確かにあった気持ちなんだけど、とっくに忘れてしまった気持ちをここまで再現しているのには正直驚いた。すごいな、あずまきよひこ
全体を通して思ったのは、こんなことも楽しめていた自分が昔いたかもしれないことと、やはり今楽しんでいる自分も同じく「いたかもしれない」と、将来忘れられる自分になってしまうんだなということ。よつばと!のテーマは1巻の最後の話に集約されていると思っている訳ですが、この物語はコメディである以上に、回顧録であったりすると思うのですよ。たくさん忘れたものがあって、今楽しいと思ってやってることもきっと忘れ去られる。その事実を作中で描かれる大人の視点、あるいはよつばの年齢からは明らかに離れすぎた読者の視点から観察しなおした皮肉というんですかね。それでも「忘れまい!」と抗う力、楽しいことに再度参加しようとする力がこの作品の原動力だったりするのかもしれません。