唯一無二の友

昨日買ったドージンワークを読んでいたら、一週間ほど前に再会した友人のことを思い出しました。
彼とは小学生の時からの付き合いで、自分の数少ない親友と呼べる人間でしょう。自分には、その人が不幸になってしまったなら、自分の心を痛めるような、そういう存在は片手で数えるほどしかいません。その一人に彼は数えられると思います。
ちなみに、五本の指以外の人々はまぁ、友達ですけど、不幸になったら笑い飛ばします。
それはいいとして、彼と一週間前に、一年ぶりくらいに再会したんですよね。彼は短大を出て、今ではパンを作る工場で働いています。高校生の時にはいっしょにC○さ○らの鑑賞会を開いた仲です。
久しぶりに再会した訳ですから、仕事の愚痴だとか、そんな他愛もない近況を語り合っていました。そんな会話をしていて、漫画の話となり、折角なので自分の部屋に案内しました。自分の部屋には大体600冊くらい漫画があります。
それで、こんな漫画読んでるんだよと話しつつ、パラパラと漫画をめくっていたら、唐突に彼が口を開きました。
「ねえ、○○○の部屋ってエロ漫画あるの?」
まぁ、こういう年頃の男が二人なのだから、そういう話もあるのかなと思って、その程度に捉えていたのですが、次に彼は
「俺、一人暮らししようと思うんだ…。」
と言いました。無理に前後の文脈を繋げば、実家ではエロ漫画もろくに読めないから、一人暮らしを始めて、エロ漫画ライフを堪能したい。と、こんな感じでしょうか?言い遅れましたが、彼は実家住まいで、三兄弟の長男であり、2LDKほどのとても狭い家に住んでいます。ですから、兄弟間のプライバシーもあったものではありません。
しかし、エロ漫画ライフは勝手な推測。こう言われたら、理由を聞くのが親友というものでしょう。何故。私はそう聞き返しました。
「実は俺、漫画家になりたいんだ…。」
先ほども言ったように、彼は工場で正社員で働いています。そんな彼が今、漫画家を目指している。当然不安になるのが親友でしょう。何故なら、私は彼が不幸に片足つっこんでいるようにしか思えなかったからです。そして彼の不幸を願ってはいない。
ちなみに五本の指以外の友人だったなら、煽ります。そして心の中でくすくす笑います。
どうも、さらに深く事情を聞いてみると、彼はとりあえず同人誌を出したいそうで、彼の高校時代の友人達と同人サークルを立ち上げたそうです。この一年の間にコミケなどに通い、同人誌の研究を行ってきたそうです。今年の夏コミも仕事を休んで行くそうです。
それで、その研究の結果として、やはり同人誌を書くのならエロ同人誌だろう、という結論に達したそうです。彼の見た目は、20を越えながらも高校生でもとおるほど幼いもので、実際その見た目どおり「とっとこハム太郎」や「おじゃる丸」が好きだった彼の口から、そんな卑猥な言葉が出るとは予想していませんでした。それでも、彼なりに真剣に考えた結果なのでしょう。
そこで、先ほどの話に戻ります。彼はエロ同人誌を書きたいのですが、プライバシーもクソもない家の事です。中には年頃の妹もいます。そんなところで女の子がアンアン言っている絵を描けるでしょうか?いや、描けません。そこで彼は「一人暮らしを始めたい」という結論に達したそうです。
確かに、話としては筋は通っていますし、彼が誰よりも漫画を愛する心を持っていることを、私はよく知っています。是非とも応援したい気持ちもあります。なにせ、私がアニメサークルに入っているのを知っていて、何かオタクの18禁文化について、良い知恵があるのではないかと訪ねてきたような彼ですから。
しかし、彼とはよくイラストを描いたりしていたのですが、まぁ、なんというか、私より画力は幾分か劣ると思います。確かに、長い間付き合ってきた私くらいになれば、彼の絵の面白みも理解できます。しかし、思いっきりハム太郎おじゃる丸に影響を受けた彼の絵が、初見の方に理解されるかと言えば、それは甚だ疑問です。しかも18禁です。
そもそも、彼が女の子の絵など描いているところなど、ほとんど見たことがありません。ジャンプ系の男の絵か、動物の絵かのどっちかだと思います。そんな彼が、2○歳にして女性の裸体の絵を描こうというのです。
それに添えて、彼はこんなことも言っていました。
「今の仕事を辞めようと考えてるんだ。」
もう自分にはどうしたらいいのか分かりません。彼は毎日繰り返される労働の日々に疲れて、暫しの現実逃避をしているだけなのでしょうか?それで漫画家になりたいなどと言い出したのでしょうか?
それとも、彼の想いは真剣で、女体画の創作活動により、彼の夢の実現への突破口を見出そうとしているのでしょうか。
もう一度だけ繰り返します。私は彼には不幸になってほしいとは思いません。
わりと親友でもない友人だったら、「お前なら出来るよ!」とか適当なこと言ってやらせますけど。
こんな話は漫画の中だから笑えるのです。実際にそういう人間が目の前にいたら、笑ってる場合じゃありません。私は彼のために何をすることが出来るのでしょうか?
嗚呼、友よ。
我が友よ。
…。

ドージンワーク (4) (限定版) (まんがタイムKRコミックス)

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