ARIA The ORIGINATION 第11話 ★×9

今回はあらゆる意味で半端ねぇ!今まで観てきた作品の中で、これほど「大人になってしまう淋しさ」を、実感のレベルで追体験させる話はない。そう思うほど辛い話だった。
自分としては、もはやOPの冒頭でアリスや灯里とすれ違う藍華を見ているだけで「もうやめてくれえぇ!!!」という感じでした。あの、離別して各々の道を歩いていかなきゃいけない「時間切れ」な感じがもう耐えられん。やっぱ就業を契機に突然ぱったりと「時間切れ」が訪れるもんなんですかね。想像しただけでおそろしや。
しかし、Aパートの、藍華の成長っぷりもさることながら、やはりBパートのアリスのお話。これが一番心に、というより精神的に来たな。
「考えないようにする」って考え方も自身としてはすごく刺激的だった。自分の力で足りるのか、ちゃんとやっていけるのか。仕事について、そういう不安に立ち向かうためには自分を忙しくして、考えないようにしてしまう。そんな風にして不安なスタートを誰しも乗り越えるものなんでしょうかね。自分を忙しくして、不安を紛らわすことはよくある話です。しかし、実際仕事をする場面でも、自分を忙しくして他のことを考えないようにすることで、人は日々をどうにか折れないように過ごしているのかなって想像すると、なんだか妙にリアルに感じてしまう。
ついでに言うと、仕事の終わって帰るのが9時や10時という生々しさが妙に痛い。これから人に会うには中途半端。そのまま明日に備えて休んでしまおうか。今まで子供とばかり思っていたアリスが、生々しいサラリーマンのような生活を送っていることに、少なからず衝撃を覚えた。
これだって、「大人になったら」をすごく想像させる描写だったりする。大人になってからは、子供のように遊んでばっかいられないのは当然だと思う。たまたまお互いが土日休みのようなら、会う機会にも恵まれるだろう。でもそうでなかったら、いつ会えばいいのだろう。時間的制約が真っ先に頭に浮かぶ、それから、働くことのしんどさで、休みの日は一人でふいにしてしまうかもしれないという可能性も考える。そんな怠惰さすら、あれ以来連絡を取っていないアリスから想像してしまう。深読みなのは分かっているんですけど、どうしても考えてしまう。
すでにこの時点で発狂して「やめろおおおおおお!!!!」と一人のたうちまわっていた訳ですが、さらに追い討ちもある。電話をかけられないアリスですね。
なんとなく会わなくなってから、「気まずく」なってしまうのは、生活レベルでよくある話。ちょっとしたことで疎遠になると、すごく連絡がとりづらい。今の相手の事情がわからなくなってしまうと、他人行儀になってしまうし、「きっと都合が悪い」と決め付けて連絡をするのが億劫になってしまう。というか、あり過ぎて困る。
思うに、アリスは拒絶されるのが怖いのでしょう。自分の心では、まだ十分に相手のことを想う気持ちがあるのに、それがたとえ本当に相手の都合が合わないとかの理由でも、拒絶されてしまったらもう立ち直れないほどネガティブになってしまいそうだし、次に誘う勇気がなくなってしまうから、連絡が出来ないんでしょうね。しばらく会わないと、相手の気持ちすらも見えなくなってしまう。だから余計に怖い。会いたいから、会えない。嗚呼、友を想う故の矛盾。
しかし、そこはARIA。明るく出迎えてくれる灯里たち。これほどにまで友情が美しいと思ったのは本当久しぶりです。
友達だからこそ、どんなときでも変らない風に接して欲しいし、それが子供時代の楽しかった思い出、ノスタルジーとの接点として残り続けて欲しい。そういう唯一のものが友情だな、って思ったよ。大人になってからじゃ共有できない感情を、子供の時に共有した存在、だからこそアリスがいれば、それが十分に理由になる。
今回のARIAは、なんだか全てが生々しい現実感がある。今までのような、ほわほわしたファンタジーな話とは訳が違う。全部が地に足の着いた生活実感を伴っている。これは、ARIAというノスタルジーを終わらせる物語と同時に、現実として、これから助走をつけて大人になるための人たちのための希望のある物語でもあるでしょう。